#7 Cotton Linen

  デニムジャケットと聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、いわゆるGジャンと呼ばれるトラッカージャケットや、王道のカバーオールではないだろうか。スペルバウンドでも長年にわたり展開している普遍的なアイテムであり、近年のデニムブームも相まって、一着は持っているという方も多いはずだ。

 しかしデニムジャケットの世界には、トラッカーやカバーオールとは異なるルーツを持つモデルも存在する。そのひとつが、ミリタリー由来のデニムジャケットである。

 そもそもデニムは労働着として誕生した素材であり、その高い耐久性から100年以上前にはミリタリーの現場でもワークウエアとして使用されていた背景を持つ。

 

 今回紹介する〈8oz 綿麻デニム ミリタリーシャツジャケット〉は、1919年頃からU.S. ARMYで採用されていたとされるデニム製プルオーバーシャツをベースに再構築した一着である。当時は作業着として使用されていたという説に加え、両肩や背中に「PW(Prisoner of War=戦争捕虜)」のステンシルが入った個体の存在も確認されており、さまざまな軍事シーンで使用されていたことがうかがえる。

“プルオーバー風”という、面白い違和感。

 本モデルの特徴は、一見するとプルオーバーでありながら、実際には前開き仕様となっている点にある。

 前立ての裏側には別生地を当て、さらに下側の2つのボタンのみ異なる仕様を採用。これは単なるデザインではなく、退役軍人が使用していたプルオーバージャケットを街のリメイク店で前開き仕様へ改修した、という背景を想定して設計されたディテールである。

 当時のリメイク環境では、完全に同一の生地やボタンが揃わないことも想定され、その“ズレ”までもデザインとして落とし込んでいる。

 また、ボタンを隠す比翼仕立ても特徴のひとつ。特に前立て最下部の剣先が重なる部分は縫製難易度が高く、複数回の試作と検証を経て完成度を高めている。ヴィンテージの意匠を踏襲しながらも、構造面では現代的な精度を備えた仕様となっている。

“デニムなのに柔らかい”という新感覚。

本アイテムのために開発されたオリジナルファブリックも大きな特徴である。

  素材は綿88%・リネンラミー12%からなる8ozネップデニム。デニム特有の表情を持ちながらも、従来のイメージとは異なる柔らかさと滑らかさを持たせた設計となっている。

一般的なデニムに見られる硬さや突っ張り感は抑えられており、しなやかで軽いタッチが特徴。いわゆるGジャンとは異なる着用感を実現している。

 海外展示会においても、生地に触れたバイヤーから高い関心が寄せられるなど、その質感は直感的に伝わるものとなっている。

リネン=夏、ではない。

 リネン素材は春夏のイメージを持たれやすいが、本製品においては季節性よりも素材表情の豊かさが重視されている。

 リネンラミー特有の自然なムラ感と奥行きは、デニムに新たな表情を加える要素として採用されたものであり、その結果として軽やかでレイヤードしやすい生地に仕上がっている。

 春夏は軽い羽織として、秋冬はアウターのインナーとしても活用でき、通年での着用が可能なバランスを持つ。

“育てる”というより、“気軽に着続ける”デニム。

 本アイテムは製品洗い後に天日乾燥を施しており、着用や洗濯による極端な風合い変化が起きにくい仕上がりとなっている。

 一般的なデニムジャケットのように経年変化を楽しむだけでなく、日常の中で気負わず着用し続けられることも大きな特徴である。

 ヴィンテージに着想を得た背景、緻密に設計されたディテール、そして独自開発の素材。それらを融合させながら、日常着として成立するバランスにまとめ上げた一着となっている。